宮 TEMPLE

民が約束の地に入ったとき、神は民と会う場所を選ぶと言われました（申命 12:5）。ダビデはエルサレムがその場所であることを見極め、契約の箱を納める神殿を建てることによって神に敬意を表したいと考えました。しかし神はダビデに言いました、「［あなたの子］がわたしの名のために一つの家を建て［る］」（2 サムエル 7:13）。そして、神殿を建てる特権はソロモンに授けられました。

神殿を建てる時

通常、建築現場には物を切る音や、ハンマーの音や、作業者の大声などが聞こえますが、この神殿は完全に静かな中で建てられました。すべての石は採石場で切り取られ、加工され、組み立ての準備が整った状態で建築現場に運ばれました。

すべての材料が用意されると、建てるようにとの命令が出され、神殿は静かに建てられました。「工事中、槌や斧や、いかなる鉄の道具の音も、いっさい神殿の中では聞こえなかった」（列王記第一 6:7）。

この絵図は、新約聖書の中で神の民が「生ける石」と表されているところで再び取り上げられています（1 ペテロ 2:5）。神があなたの人生でなさっていることはすべて、あなたを永遠の未来のためにあなたを形作っているのです。あなたの痛みや苦しみは採石場の槌やノミであり、神の神殿の生ける石となるために形作っています。イエス・キリストが再臨されたとき、準備は完了し、神の民は神が宿る栄光の神殿となるのです。

神の石切り屋

数年前、私たちはルーマニアの牧師ジョセフ・トンを我が家に数日間迎える機会がありました。彼は信仰のゆえに投獄されたことがあり、私たちはキリストへの献身の為に彼が支払った代価について話してくれたことに熱心に耳を傾けました。

警備員が残酷だったため、囚人たちが警備員たちをどれほど憎んでいたかを話してくれました。しかし、ジョセフは警備員と、彼らの家族のために祈ったそうです。ある警備員が彼に尋ねました、「どうしてあなたは私に対して恨みを抱かないのだ？」

ジョセフは答えました、「私にとって、あなたは神から送られた石切り屋だからです。」

あなたの人生において、神から送られた石切り屋は誰ですか？彼らはあなたに痛みをもたらしたかもしれませんが、神はあなたをキリストの似姿に形作るためにその痛みを用いられます。神はまた、あなたの健康、家族、仕事、財産などにおける困難な状況を用いて、あなたを形作ることもあります。その過程は常に痛みを伴うものですが、キリストが再臨されたとき、あなたはキリストが召されたような姿になっています。そして、天の御国にあなたのために用意されている場所に行き、神の臨在を永遠に喜ぶことができるのです。

献堂式

建物が完成すると、民は献堂式のために集まりました。それは神の民の歴史の中で最も偉大な機会の一つでした。祭司たちが契約の箱を神殿の中心にある至聖所に持って行ったとき、神の臨在が下りてきました：「雲が主の宮に満ちた。祭司たちは、その雲のために、立って仕えることができなかった」（1 列王 8:10−11）。

この時代の民は神の臨在を直に経験したことがありませんでした。最後に神の栄光がこのように示されたのは、四百年以上前の砂漠の中でした。それで、ソロモンは民に何が起こっているのかを説明しなければなりませんでした：「主は、黒雲の中に住む、と言われました」（8:12）。

宮の中心部にある至聖所は、契約の箱を収容するために建てられた暗い部屋でした。箱の蓋には、神の裁きを表すケルビムの金の像が飾られていました。ですから、神の臨在が下りて来たとき、神はその像が象徴している隔ての壁を打ち破って、彼の民の中に来て下さったことを示していたのです。

礼拝によって応える

神の臨在に対するソロモンの最初の応答は礼拝でした！「イスラエルの神、主がほめたたえられますように。主は御口をもって私の父ダビデに語り、御手をもってこれを成し遂げ［た］」（8:15）。

しかし、ソロモンは、いかなる建造物にも神を封じることはできず、神の臨在の雲はやって来たときと同様に、簡単に去ってしまう可能性があることを知っていました。ソロモンは、一時の神の臨在以上のものを望んでいました。彼は、宮が永久的に神の臨在の場になることを望み、次のように祈り求めました：「この宮、すなわち『わたしの名をそこに置く』とあなたが言われたこの場所に、夜も昼も御目を開［いてください］」（8:29）。

ソロモンはまた、神がエルサレムから何キロも離れて住んでいる人々の祈りを聞いて下さるようにと頼みました：「あなたのしもべとあなたの民イスラエルが、この場所に向かってささげる願いを聞いてください。あなたご自身が、あなたの御住まいの場所、天においてこれを聞いてください。聞いて、お赦しください」（8:30）。

神の臨在によって祝福された未来を期待して、ソロモンは喜びに満ちていました：「主がほめたたえられますように。主は約束どおり、ご自分の民イスラエルに安住の地を与えてくださいました…私たちの神、主が、私たちの先祖とともにいてくださったように、私たちとともにいて、私たちを見放さず、私たちをお見捨てになることがありませんように」（8:56、57）。

神殿の悲劇

しかし、喜びは長続きしませんでした。ソロモンの時代の後、マナセという名の別の王が他の神々の崇拝を促進し、神殿で占星術を使うことを導入しました（2 列王記 21:5）。この偶像崇拝は神にとってあまりにも不快だったので、神は民を敵の手に渡されました。バビロニア軍がエルサレムを包囲し、街は崩壊し、神殿は破壊されました。

エルサレムは瓦礫の山となり、その過程で契約の箱は失われました。そして、(インディアナ・ジョーンズ！《訳注：映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の主人公》の努力にもかかわらず)、契約の箱が再び発見されることはありませんでした。この事実は非常に重要です。契約の箱がなければ、神殿はもはや神が民と会う場所となることはできないのです。

神殿はエズラとネヘミヤの指導の下で再建されました。しかし、それはソロモンによって建てられたものの面影でしかありませんでした。民は礼拝のために集まりましたが、神の臨在の雲が下りてくることはもはやなかったのです。そして、主イエス・キリストの時代には、神殿は「強盗の巣」となっていました（マタイ 21:13）。

私たちと共にある神殿

ヨハネは、イエスの誕生を次のように語っています、「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた」（ヨハネ 1:14）。「住まわれた」の原語は、「幕屋を張る」、つまり「テントを張る」ことを意味しています。ですので、イエスが生まれたときに神の臨在が民の間に下りて来られたとヨハネは言っているのです。

イエスは、公のミニストリーの早い段階で、神殿に訪れ、言われました、「この神殿を壊してみなさい。わたしは、三日でそれをよみがえらせる。」（ヨハネ 2:19）。イエスの言われたことを聞いた人たちは、イエスが建物について語っているのだと思っていましたが、イエスは自分自身の体について語っていたのです。すなわち、イエス自身が、神と人とが会う場所になると言われていたのです：「もしあなたが神と会いたいのなら、私のところに来なさい。」

人が神と会える場所は、エルサレムにある建物でも、その他の場所でもありません。あなたが神と会うことができるのは、イエス・キリストを通してです。ソロモンは、神殿に向けられた祈りに神が耳を傾けてくださるようにと、祈りました。しかしイエスは、イエスの名によって捧げられた祈りを神は聞いてくださると約束しています： 「わたしの名によって父に求めるものは何でも、父はあなたがたに与えてくださいます」（ヨハネ 16:23）。

私たちの内に宿る御霊

弟子たちがイエスと共にいたとき、彼らは神の臨在をいつでも経験することができました。神は人となったイエスを通して彼らと共にいてくださいました。そのため、イエスがこの世を去ることについて語り始めたとき、弟子たちは困ってしまいました。

しかし、イエスは言われました、「わたしが父にお願いすると、父はもう一人の助け主をお与えくださり、その助け主がいつまでも、あなたがたとともにいるようにしてくださいます。この方は真理の御霊です…この方はあなたがたとともにおられ、また、あなたがたのうちにおられるようになるのです。わたしは、あなたがたを捨てて孤児にはしません。あなたがたのところに戻って来ます」（ヨハネ 14:16−18）。弟子たちはイエスを通して共にいてくださる神の臨在を経験していましたが、これからは、彼らの内に住んでくださる御霊によって神の臨在を経験することになるのです。

信仰者に与えられる御霊の贈り物は、あまりにも驚くべきことなので、パウロは次のように問います：「あなたがたは知らないのですか。あなたがたのからだは、あなたがたのうちにおられる、神から受けた聖霊の宮［です］」（1 コリント 6:19）。このことを実感してみてください。：あなたの身体は聖霊の宮です。ソロモンの神殿が献堂さられたときに、神の栄光の臨在が神殿に下りてきたように、神の臨在は主に献身している人々の人生を満たすのです。だからこそ、パウロは、信仰者が「人知をはるかに越えたキリストの愛を知ることができますように。そのようにして、神の満ちあふれる豊かさにまで、あなたがたが満たされますように」（エペソ 3:19）と祈るのです。

人類の歴史の全ては、イエス・キリストがご自分の民を神の御前に連れて行く日に向かっているのです。使徒ヨハネは、これがどのようなものかを垣間見ることが許されました。彼は偉大な都と大勢の人を見ました。それから、彼は「大きな声が御座から出て、こう言うのを聞いた。『見よ、神の幕屋が人々ともにある。神は人々とともに住み、人々は神の民となる。神ご自身が彼らの神として、ともにおられる。』」（黙示 21:3）。

開かれました

神殿の中に神の臨在を示す雲は、神がキリストにおいて成されることを指し示していました。神は人間の肉体に入り、イエス・キリストとして私たちの間に下りて来られました。私たちが主を信じるとき、神は御霊によって私たちの内に臨在してくださり、私たちが神と共に永遠に住むときに感じる喜びの一部を、前もって味わうことができるのです。