エルサレムの街全体で、イエスを信じる信者は120人ほどしかいませんでした（使徒 1:15）。地域の人々と関わっていく働きは、弟子たちの手に負えないことのように思えました。お金もほとんどありませんでしたし、人材も多くありません。恐れるべきことはたくさんありました。彼らのメッセージが受け入れられる余地はほとんどない文化でした。イエスが彼らに与えられた「あらゆる国の人々を弟子とする」という課題は、不可能に思えたに違いありません。
しかし、キリストは、これらすべてを一変する出来事について語られていました。間もなく「聖霊によるバプテスマを授けられる」（使徒 1:5）と言われました。また、「あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤとサマリアの全土、さらに地の果てまで、わたしの証人となります」（1:8）と付け加えられました。
彼らは長く待つ必要はありませんでした。イエスが天に上られてから、ちょうど十日後に、聖霊がキリストを信じる最初の信者たちに注がれました。そして、それ以後、全てが変わりました。
吹く風
信者たちが集まっていると「天から突然、激しい風が吹いて来たような響きが起こり、彼らが座っていた家全体に響き渡った」（使徒 2:2）。
イエスが復活後、弟子たちの前に現れた時、「彼らに息を吹きかけて言われた。『聖霊を受けなさい。』」と記録されています（ヨハネ 20:22）。イエスはペンテコステの日に何が起こるかを説明してくださっていたのです。イエスは弟子たちにこう言われていたのです：「このような感じです。わたしは天に上るが、上ったら、上からあなたがたの中にわたしの命を吹き込みます」。そして、深呼吸をして、弟子たちに向かって息を吹きかけられました。
ですから、それからほんの数日後に、弟子たちが激しい風のような音を聞いたとき、彼らはすぐにその音から、イエスが彼らに息を吹きかけた時の音を連想したことでしょう。そして、イエスが約束してくださったことが成就したと気付いたでしょう。
もちろん、神の霊は以前から信者の生活の中で働いておられました。旧約聖書では、聖霊は多くの人に臨み、特定の任務のために油注ぎをしておられました。また、ペンテコステ以前の弟子たちの経験も似たようなものだったでしょう。しかし、今回は全く新しい出来事でした。神の霊が彼らと一緒にいるだけでなく、彼らの中に住まわれたのです。
燃えなかった炎
上階の部屋に集まっていた信者たちは、「炎のような舌が分かれて現れ、一人ひとりの上にとどまった」のを見ました（使徒 2:3）。これは恐ろしかったに違いありません。
大きな火の玉か、火の柱のようなものが彼らに向かって来ました。近づいてくると、それは個々の炎に分かれて、部屋にいたすべての人の上にとどまったのです。驚いたことに、火傷をした人は一人もいませんでした。
以前にも似たようなことがありました。芝の中で燃える炎の中から、神がモーセに話しかけたときには、芝は燃え尽きませんでした（出エジプト 3:2）。神はモーセと共にいてくださることを約束してくださいまいた。そして、ペンテコステの日には、神が共にいてくださることを同じしるしで、最初の信者たちに示してくださったのです。神が炎の中からモーセに語りかけ、使命を授けたときのことを、彼らは思い出したことでしょう。今度は、炎は誰のところにとどまるだろうかと、彼らは思っていたことでしょう。ペテロでしょうか、それともヤコブとヨハネでしょうか？もしかしたら三人ともかもしれません。
しかし、火の玉は個々の炎に分かれて、それぞれの信者の上にとどまりました。この世界での神の目的を推進するようにと、神はすべての信者に任務を授けられました。一人ひとりが宣教活動のための賜物を授けられ、準備を整えられていたのです。
異文化コミュニケーション
風と炎に続いて、第三の驚くべき出来事がありました。突然、同時に、信者たちは学んだことのない言語で話すことができるようになったのです（使徒 2:4）。
これはバベルの塔（創世記 11章）で起こったことと全く逆のことでした。聖書の物語の早い段階で、神は複数の言語を人類に与えることによって、人間の反抗の勢いを止められました。その後の混乱と孤立の中で、人々は東西南北に散らばっていきました。
ペンテコステの時には、「天下のあらゆる国々から」人々がエルサレムに集まっていました（使徒 2:5）。信者たちがそれまで一度も学んだことのない言語で同時に話すように、神がしてくださったので、東西南北からやって来た全世界の人々が、イエス・キリストの良い知らせを聞き、理解することができました。
大群衆が集まっていました。ペテロは彼らにイエスの死と復活について話しました。神はイエスを高く上げられ、そして今、約束されていた聖霊をご自分の民に注いでくださったのですと、群衆が見聞きしたことを説明しました。
三千人の人がペテロのメッセージに応え、イエスへの信仰を告白してバプテスマを受けました。彼らは家に帰る際に、イエスの福音の良い知らせを持って、自分たちが来た町や国に帰って行きました。
地球上のすべての国民を祝福すると神は約束しておられました。神の祝福の流れは、アブラハムという一人の男から始まりました。そして今、神のあわれみの川は堤防を破り、世界中のすべての国へと氾濫しています。
最初の山からの眺め
ペンテコステの話は、神の聖霊がすべての信者に与えられることを教えています。もしあなたがキリストに属するならば、神のいのちがあなたの内にあり、神の臨在があなたと共にあり、神の祝福があなたの上にあります。
聖霊によって、すべての信者は奉仕と宣教活動のための備えと力を授けられます。以前は特別な宣教活動のために油注がれた少数の人を通して神は働いておられましたが、今は聖霊がすべての信者の中に住まわれ、すべての信者を通して働いてくださります。
神は、文化や言語の壁を越えてイエスの福音の良い知らせを伝えるようにと、私たちを召してくださっています。それによって神の祝福が地球上のあらゆる部族、言語、国の人々に流れます。その目的のために果たすべき役割がすべてのクリスチャンにあります。あなたがその召命に従って踏み出すとき、あなたは自分の弱さを経験し始めるでしょう。
